グラスリッツェンにたずさわって20年が経とうとしています。
いま、私にとってグラスリッツェンは、暮らしに深く根づいています。始めた頃は、こんなにも夢中になることは予想もしていませんでした。
約20年前の私の子育て当時、公園デビューという言葉が流行ったのですが、子どもを持つ母親がうまくコミュニティーに溶け込めるかどうか、世間でも取りざたされて、母親になったばかりの私はプレッシャーを感じていました。
そんな時に偶然グラスリッツェンを知り、習い始めました。
ガラス工芸の中でもっとも繊細といわれる、その美しさに魅力を感じたことはもちろんですが、趣味を通じて様々な年代の方と知り合い、自分の好きな時間を持つ事で、私は「子どもを持つ母親」という括りから一歩抜け出せて、ラクな気持ちになったのです。世界がひらけたように感じましたし、無心になれるものを見つけたことで、自分のより所が出来たのですね。
趣味とは、そういうものなのかなと思います。なくても暮らせるものですが、こころの潤いになってくれます。
グラスリッツェンは線を1本ずつ何度も彫り重ね、点をいくつも打って、やっと図案が浮かび上がってきます。気の長い作業ですが、忙しい今の時代に逆行するこの様な時間の流れが、本来の生活を取り戻してくれる様な気がします。
あまり彫れない時期もありましたが、ずっと続けてきていつも思うことは、
手で彫ったものには機械彫りにはない、あたたかみが感じられるということです。
少しずつ彫ってゆくと、かけた時間の分だけ、ガラスが応えてくれます。
その素晴らしさを皆さんにお伝えしたいという気持ちがつのり、グラスリッツェン工房Sorrisoをオープンいたしました。
工房名のSorriso(ソリッソ)は、イタリア語で笑顔を意味します。
ゆっくりとした時間の流れを感じる教室で、いらした方に「笑顔になっていただきたい」
心をこめて1点ずつ制作した作品で「手にした方の元へ、やさしさと笑顔をはこびたい」 との願いをこめました。
グラスリッツェンを通じて、皆さまへ笑顔をお届けできます様に努めてまいります。

工房主
木下浩子
マーレングラスリッツェンジャパン講師会会員
1997年 | いとうえりこ氏に師事。 マーレングラスリッツェンを始める。 |
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2000年 | 日本ヴォーグ社刊 やさしい手彫りガラス(いとうえりこ著)制作協力(作品掲載) |
2003年 | 千葉県印西市JOYFUL-2千葉ニュータウン店 カルチャー教室開講 |
2006年 | 地元佐倉にて 作品展開催 |
2009年 | 銀座(ギャラリーフラッグ)にて、ガラス工芸家の弟(池辺晴彦)と合同作品展開催 |
グラスリッツェンを習いたいと思いたち、今ほど教える人が多くない時に
いとうえりこ先生の教室にめぐり合い、先生についてマーレングラスリッツェンを学ぶ事が出来たのは非常に幸運なことでした。
様々なモチーフを彫る上で、物の色、質感や重みを感じながら彫ることを学びましたが、そう難しいことばかりではなく、人それぞれ自分の思う表現をしても良いという事も、教えてくださいました。
「マーレン」はドイツ語で、絵を描くという意味だそうですが、ガラスに自由に描いていく
(基本の彫り方はもちろんしっかりとありますが)、そういう楽しみ方もあるということです。
同じ図案を用いても、10人いれば10とおりの、全部違う作品が出来上がります。
それが、グラスリッツェンの良さであり、機械にはまねの出来ないところなのです。
工房Sorrisoのグラスリッツェン教室では、マーレングラスリッツェンの流れをくんだ、色味や質感、重さまでも感じる表現を学びつつ、好きな絵柄を自由に彫っていただけるまでの、皆さまの道しるべになりたいと思っています。
同時に、ゆっくりとした時間の中でこころを潤していただける場所を、提供していきたいと願っております。